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「力」とは全て、「神」の神秘に他ならない。「神」とは全ての世界の軸と言われ、最も高次な存在であるらしい。世界はそもそも、「神」――神が定めた理なくしては成立しないというのが大前提になる。
医者も「神」のはしくれだが、本来の神の指先にも満たない程度だという。神の細胞の一つと言っていいそうで、強力な人外生物の多くは、そうして「神」を名乗るほどの「力」を持っているのだ。
「多少使えはするだろうが、『黄輝』に呑まれるなよ。フリーなおまえの最も望まない、『神』の制約に縛られることになる」
「何さ、それ。悪魔の次は神ってこと、オレ」
「…………」
そこで医者は、何故か神妙に、悪魔をしみじみと見つめて言ったのだった。
「……この年になっても、時々わからなくなる。入れ物と中身、本当に大事なのは、いったいどっちなんだろうな」
「――は?」
「おまえみたく、中身に合わせて入れ物を変えるような奴が、稀に存在するからだ。おまえの相方は、よその入れ物の中身を勝手に使う奴だが、おまえは何でも新たな中身を受け入れ過ぎる」
分かり難い喩えだが、医者は要するに、「力」を中身と言っているらしい。入れ物は多分、その「力」を扱う意識のことでも指しているのだろう。
悪魔の四つの意識の内で、本体以外の三つはそれぞれ、「吸血鬼」、「黄輝」、「黒魔」の担当だったのだから。
「よくわかんないけど……フツーは、そうじゃないの?」
「たわけが。中身も入れ物も、そうそう変わってたまるものか」
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