_6:

8/10

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/190ページ
 医者曰く、中身は入れ物を選んで現れる。それも全てがきっちり収まることは珍しく、入れ物――その人外生物に合わせて、中身たる「力」は制限されるらしい。 「それで言うなら、入れ物に合わせて中身は形を変える。人間界という箱の中では、なるべく大人しく暮らさなければいけない、化け物のおまえ達のようにな」  「力」と人外生物の喩えが、何故か突然場所の事に変わってしまった。しかし逆に、わかりやすくなったとも言えた。 「まあつまり、本来優先されるべきは、入れ物だということだ」 「ふーん、そーなんだ。大事そうなのは、入れ物より中身っぽいのにね」 「その通りなんだがな。おまえがおまえである理由は、入れ物より中身なのに……入れ物を変えてまで、中身を増やすおまえは何者なんだ?」  それでは既に、元と同じ中身とすらも言えないかもしれない。  悪魔の本体の出現を待つ医者の懸念は、そこにあるようだった。 「……そんなの、オレがききたいし」  悪魔も好きで、こうなったわけではない。  悪魔の故郷と鏡合わせの人間界で、悪魔と対になる者が存在する可能性は知っていた。そして現に、先日に出会った。  それが「汐音」の出現にどう影響したかはわからない。しかし、関係がないというのは無理があるだろう。  考えても無駄なことより、悪魔の意識はやがて、目前の事柄に移っていった。 「そう言えば……ツバメの奴は、何してんの?」
/190ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加