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 せっかく人間界に来た相方を、寝こけて放置してしまった。  相方は一度やる事が決まると、妙に勤勉になるところがあるので、一人でも必死に新生活のために動いているのだろう。 「アイツは菜奈ちゃんと、屋敷の不用品あさりに行った。おまえはさっさと、それを持ち込む住所を決めてこい」 「へー、そっか。布団とか色々くれるって言ってたもんね、菜奈ちゃん」  悪魔もそうだが、相方もこの診療所の受付嬢と、以前から仲が良い。人の好い受付嬢は、悪魔達の新生活を心から応援してくれていた。  眠り過ぎてしまった程度に、体調は良くないが、悪魔もまたやる気が出てきた。  今日は色々と、昼間の内にしておいた方が良さそうな事もあった。 「ツバメはまだ当分、帰ってこないの?」 「だろうな。あまりに真っ青なままだから、菜奈ちゃんがついでに花見に連れ出すそうだ」 「えー、ずるいー。オレもそっち行きたいー」  花見と聞いて、あっさり気が変わった悪魔に、医者は呆れたような顔をしてから背中を向けた。 「おまえはまず、さっさと食事を見つけてこい」  悪魔の当初の予定を見透かすような、渋い台詞を捨てていく。  相方達の花見場所も、この屋敷の一角の桜だろうとわかっていた。悪魔も何度か見に行ったことがあるので、今回は渋々と診療所を後にする。 「そっか。もう桜の時期、か」  歩き始めると確かに、そこかしこから春が匂う、手入れされた庭園の多い高級住宅街だった。
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