16人が本棚に入れています
本棚に追加
/190ページ
「詩乃ちゃんは君のこと、天から落ちてきた天使みたいだって言ってたよ? それっていいのか悪いのか、私にはわからないんだけどねー」
そう言えば悪魔について、天を捨てた天使だと詩乃は観立てをしていた。
それはとても言い得ていながら、大きく外れた答だった。
「オレは別に、天使じゃないし……天だって、捨ててないし」
故郷での悪魔の仕事は、「死神」――天国の番人と言って差し支えない。どこにいてもその仕事は続いており、そちらの異常を感じれば、今すぐにでも帰らなければいけないだろう。
堤防に座る陽子は日向にいるが、橋の下にいる悪魔の足下から、陽子に向かって徐々に影が伸びていることには気が付いていない。
このまま話を続けて、注意を引いておいた方がいい。そう思った悪魔は、聞かれてもいないことを、不思議と気軽に陽子に話し始めていた。
「オレはずっと、天使を探してここにいるんだよ。おねーさんの子供みたいな、可愛い天使をさ」
「え? 何それー? うちの夕烏はそりゃ、完璧天使だけど!」
冗談めかして笑って話した悪魔に、人見知りのなさそうな陽子がすぐに打ち解けてくる。
今日もおそらく夜の仕事で、日中は保育園に子供を預けているのだろう。一人で川を見つめていた時の顔は疲労で冴えなかったが、悪魔と話し始めてからは、本来の陽気さが出てきたようだった。
最初のコメントを投稿しよう!