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「詩乃ちゃんは君のこと、天から落ちてきた天使みたいだって言ってたよ? それっていいのか悪いのか、私にはわからないんだけどねー」  そう言えば悪魔について、天を捨てた天使だと詩乃は観立てをしていた。  それはとても言い得ていながら、大きく外れた答だった。 「オレは別に、天使じゃないし……天だって、捨ててないし」  故郷での悪魔の仕事は、「死神」――天国の番人と言って差し支えない。どこにいてもその仕事は続いており、そちらの異常を感じれば、今すぐにでも帰らなければいけないだろう。  堤防に座る陽子は日向にいるが、橋の下にいる悪魔の足下から、陽子に向かって徐々に影が伸びていることには気が付いていない。  このまま話を続けて、注意を引いておいた方がいい。そう思った悪魔は、聞かれてもいないことを、不思議と気軽に陽子に話し始めていた。 「オレはずっと、天使を探してここにいるんだよ。おねーさんの子供みたいな、可愛い天使をさ」 「え? 何それー? うちの夕烏はそりゃ、完璧天使だけど!」  冗談めかして笑って話した悪魔に、人見知りのなさそうな陽子がすぐに打ち解けてくる。  今日もおそらく夜の仕事で、日中は保育園に子供を預けているのだろう。一人で川を見つめていた時の顔は疲労で冴えなかったが、悪魔と話し始めてからは、本来の陽気さが出てきたようだった。
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