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そもそもツバメは、この町に来る前の忠告通り、怪しい者からの仕事の斡旋は受けない。いい奴だと感じなければ、まず話をしようとも思わない。
言葉を飾るのが苦手なツバメの直球に、キカリさんが少し目を丸くする。
「……あははー。ツバメくん、やっさしー。でも、ねぇ……」
悪い気はしない様子に見えた。けれど何故か、キカリさんの顔は更に曇ってしまった。
「いい奴なんて、大して報われないんだよぉ。ツバメくんも、気を付けた方がいーよー?」
段々と街灯が減り、その分、家々の灯りが目立ち始める住宅街を歩く。
まるで、その薄暗さが、キカリさんに忍び寄ったかのようだった。
「駄目な人間は、いい奴だってダメなんだよぉ。いいように使われて、それでも使えなければ、見捨てられるだけなんだからぁ」
――思い出した。
駄目人間という言葉を、最初に教えてくれたのは、この女性だった。
「頑張ったって駄目なんだよぉ。誰も好きで、駄目に生まれてくるわけじゃないのにさー」
その時には、それが女性自身を表すものだと、ツバメは全く思わなかった。この女性は少なくとも、八百屋の店主には大いに必要とされているのだ。
なのにキカリさんは、どうやら自分のこととして、その単語を口にしていたらしい。
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