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 命に別状はないとはいえ、意識のない人間、それも女性を放置したら、色々と問題があるだろう。家に運ぶこともできるが、悪魔にはそれよりも先に行きたい所があった。 「あんまり起きなかったら、夕方になったら起こしてやって。『錠』はずっと下ろしとくから、ツバメは誰にも見られないように、オレが帰るまではここにいること」 「別にいいけど……汐音はこれから、何処に行くんだ?」  屋敷での不用品あさりと花見が終わり、相方は悪魔を手伝おうと探しに来たのだろう。  しかし手伝いというなら、これだけで十分だった。本来向かっていた教会のことは、むしろ相方を巻き込まない方が良く、悪魔は不可解そうな相方に笑いかけるだけで、その場を後にしたのだった。  太陽の見守る大っぴらな川辺で、陽子にこの数刻で起こったこと。それを詩乃が知れば、翼の悪魔は間違いなく危険視されるだろう。  陽子には記憶は、何も残っていないはずだ。心の隙をつくようにするのは、いつもその操作のためが大きい。 「うーん、気を付けなきゃなー。詩乃サンはともかく、『オレ』の方になー」  悪魔が食事をする際、同じ場にいなければ、詩乃をごまかすことはできそうだった。詩乃の目にはおそらく、遠見の系統の機能はない。  厄介なのはあの黒髪の少年だ。青い顔の母親が迎えに来たら、何かあった事には気が付くだろう。おそらくまだ、上手く言葉にできる年代でないのだけが幸いだ。
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