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 翼の悪魔を淋しそうだと言い、危険と知りつつ関わろうとした詩乃の目色こそ、絶えない淋しさを訴え続けていた。  人気の少ない住宅街にある、ひっそりとした教会に近付くほどに、その気配は強まるばかりだった。 ――わたしを憐れんで下さい。 ――わたしを憐れんで下さい。  詩乃の祈りは、まるで低吟する歌声のように、気が付けば悪魔の奥深くに届いてくる。  柔らかな鈴の音と共に紡がれる音が、確実に目的を持った「力」として、無遠慮に四方に放たれている。 ――わたしを憐れんで下さい。 ――わたしを神化して下さい。  おそらくは、悪魔に届くようにと、当てもなく唄い続けている詩乃。他の誰にも届かないだろう儚い声色は、確実に翼の悪魔を求めて待っている。  最早、悪魔が向かおうと思ったのか、最初から詩乃に呼ばれていたのか、それもわからないくらいだった。 ――わたしが変われば、世界は変わります。 ――わたしが変われば、世界は変わります。  まるで呪いのように、同じ祈りを繰り返す心。  赤い煉瓦の花壇の前で、花に水をやる詩乃の元に悪魔が辿り着くまで、その哀歌は唱えられ続けていく……。
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