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 人の世には人の数だけ、答がある。処刑人たる翼の悪魔には、そう感じられた。 「この世界はどこも、悪魔だらけだよ。『悪魔狩り』なんてもう完全に、必要ないくらいに」  「力」という制約――神秘に縛られない人間は、何をしようと神に赦された存在なのに、自由過ぎると逆に迷子になるのだろうか。代わりに足場を「自らの価値」に求め、「向上」に縛られる多くの人間がいるというのが、翼の悪魔から見える人間界の在りようだった。  別に誰も、無闇に人を裁くことはない。悪魔であろうと、「神」であろうと。  隣でグロッキーになっている相方のように、わけがわからず立ち尽くせばいいと、ふっと思った翼の悪魔だった。 「ひょっとしたらオマエの悪魔も……この世界にはいるかもしれないね?」  対となる者が現れる、鏡合わせの人間世界。最も近く、さかしまであるもの。  そんな事とは露も知らないだろうに、相方はげっそりと答えたのだった。 「本当に出てきそうだから……世も末だ……」  苦労性の相方に、悪魔はいつも通り気楽に笑った。 「そうかな? もし出会えるなら、オレは面白いけど」  たとえそれが破滅の足音でも、今の悪魔なら楽しめるだろう。この世界で走り続ける人間達と、きっと同じように。  そのためにこの悪魔――「汐音」は生まれたことを知る、長い約束の日が来るまでは。  翼の悪魔と相方の新生活は、まだまだ、始まったばかりだ。 Case.I 了 <別版>https://estar.jp/novels/25542490/viewer?page=1
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