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 全身の痛みはまだあるものの、ひとまず動きがスムーズになった。立ち上がってストレッチをするツバメを、あぐらをかいて座り直した汐音が、むうと恨めし気に見上げる。 「ツバメって結構、手慣れてるってか強引だよねー。さすが、リア充は違うよねー」  普段は汐音が、圧倒的に優位な立場にいる。昨日は猟犬と言われていたが、実際問題、本当に吸血鬼なのは汐音の方だった。 「オレなんて未だに、悪魔狩りしかしてないのにさぁ。ツバメの方がよっぽど吸血鬼らしいってか、絶対女ったらしだよね、オマエ」 「……俺は、汐音と(つぐみ)以外、血をもらったことはないけど」  うわー。と、横目で見える汐音の顔が歪み、さすがにツバメもバツが悪くなった。 「やっぱり、鶫ちゃんから血、もらってるんだー。鶫ちゃん、健気ー。カワイソー」 「……鶫からくれたんだ。汐音にだけ、支配されないようにって」  吸血鬼である汐音の血を体内に入れることで、ツバメは汐音から「力」を分けられ、汐音の従者としての命を手に入れた。そのため既に、体の半ば以上は吸血鬼化している。食事を摂れないのも、この中途半端な身体構成のためだ。  それ以前は、死者だったと言って差し支えない。雀鬼などと呼ばれていたが、「鬼」という言葉が本来は死した者を表すのなら、この死体に憑りついた古の鬼だった。  ややこしい部分として、体自体は、どちらかといえば聖なる生き物に属する問題もあったのだが……。
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