_3:

7/10

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/190ページ
 人間界に来て初めて知ったが、汐音はここで、「悪魔狩り」をしているという。  昔は追い払うだけだったらしい。それも雇われの身でだが、現在は完全にフリーで、好きに「悪魔」を狩っているとのことだった。 「汐音の言う『悪魔』かどうかは、さっぱりだけど」  悪魔といえば、世間的には怪物だったり、堕天使だったりするものだ。  汐音のような「吸血鬼」も近い部類だというが、それでも汐音は、怪物や堕天使には全く興味がないと言っていた。  猟犬と呼ばれたツバメは、拙い基準でそれを見つける。 「昨日のバイクの奴みたいなのなら……一人、商店街にいる」  やっぱり? と、汐音はそこで、本来のあくどい笑みを見せた。  汐音曰く、別に悪魔討伐がしたいわけではないらしい。  不干渉の律に反し、人間界に現れた人外生物がいるとして、その制裁は天使の仕事だ。しかもそれで言えば、ツバメや汐音も討伐対象だろう。  人間界にいて良いのは、人間だけなのだ。鬼や妖怪、時に神とされる数多の化生は、定められた神域にのみ祀られる。そして唯一神たる神は、本来天上に坐す。  ツバメにその違いは、正直よくわからない。  何一つ「力」のない「人間」と、それ以外の「力」ある「ヒト」が別物ということ。人と人外、その最低限くらいしか認識できない。  そしてこの人間界は、「力」――神の神秘など、とうに否定された絶地なのだ。
/190ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加