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 汐音の仕事を、手伝えと言われた時には手伝う。しかしツバメに、今差し迫った問題は、よくわからない「悪魔」より月末の家賃だ。  汐音がこれ以上説明を求めなかったので、ツバメの引っかかりも今は保留する。 ――日中はどうやら、様子を見たいようだけど。  どうしたものかとモヤモヤしていた自身より、よほど的確に、勝手に方針を定められた。  それでいい、様子を見よう。汐音にこうして誘導されるのは、ツバメはもう慣れっ子だった。  何も観ずとも、アバウトに言葉が出てくる汐音と違い、ツバメは感じたことを言葉にするのが苦手だ。言わずもがな、言葉を飾ることなど、ほとんどできない。  自然、誰かと話す時は直球になる。もしくは、七色と言われた声にもできないままで、漠然とした感情を呑み込む。  唯一の例外――誰かに合わせて、「体を売る」時を除いて。  昨夜の肌寒さを思い、今日は腰に黒い上着を巻いて出ようとしたツバメの背に、不意に汐音の声がかかった。 「多分だけどさ。オマエが気になってる奴は、オトコに苦労してると思うよ」  ツバメに浮かんでいた人間が、女性だとも言っていないのに、この有り様だ。  汐音に嘘はつけそうにないと、振り返ってツバメは苦く笑う。 「何せ、オマエに関わってくるなんて大概、世話焼きタイプの女だろーし」  当たり過ぎていて、何も言えなかった。そのまま出ていくツバメに、いってらー。と、猫と戯れながら手を振る汐音だった。
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