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 店に戻ると、その早さに驚いた店主が、今日はレジの打ち方を教えてくれると言い出していた。 「ハナちゃんは二時からだから、ちょっとだけ、やってみろや」 「……これ、俺なんかがさわっていいのか?」  お金が沢山入ったその機械は、とても大事な物だろうとツバメは思っていた。  店の奥とはいえ、こんなに無防備に置いてあるのが信じられないくらいだ。 「簡単簡単。にーちゃんにはひょっとしたら、今後店員になってもらうかもだしなぁー」  ふっと、店主が何気なく口にした言葉に、ツバメは即座に引っかかっていた。 「店員……キカリは、やめるのか?」  バイトを一人しか雇う余裕がない。それがツバメに回るとなると、経緯はそうなるはずだろう。 「さぁなー。ハナちゃんはいい子だから、できれば続けてほしいんだがなぁ」  店主とあの女性――キカリさんは、いつも楽しくやっているように見えた。だから店主も、やめてほしいわけではないようだった。 「若い子はみんな、その内出ていっちまうよ。ハナちゃんとは高校の時からの付き合いだけど、あの子は押しが弱ぇから、心配なんだがなぁ」  最近は店主もさすがに年なのか、夕方以後の片付けなどは、キカリさんに任せることが多いという。それだけ信頼されているはずだが、確か昨夜キカリさんは、「都会に行きたい」と言っていた。  けれどそれは、よくある人間の嘘。言葉だけであるように、ツバメには聞こえていた。
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