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 もう少し人の多い町に行けば、もっと良い仕事も、探せばあるのかもしれない。  しかしそれは、自分を本当に必要としてくれている所とは限らない。  商店街の中でも感じていたが、この八百屋のようにツバメが実際に役に立てて、だから丁重に扱おうと思ってくれる所は、そう多くはなかった。 「キカリは多分……ここのこと、良いって思ってるけど」 「ほんとかい? それならいいんだがなぁー。ハナちゃん、いい子だからなぁ」  駒にするだけなら、雇ってくれる所は多くある。それはそれで、切実なのだと想像できるが……もしも選べるのなら、なるべく自分を大切にしてくれる仕事場に、誰しもが行きたいだろう。  難しいのは、その見分けが、人間にはなかなかできなさそうなことだ。  ツバメはその意味では、店主の人の好さがわかるだけで、相当難を逃れているはずだった。  そして、キカリさんもおそらく、この店が自分を大事にしてくれているのはわかっていた。  だから、転職できない……――したくないと、昨日は言っていたのだろうから。  遅番ばかりというのも、キカリさんは、朝が強くないらしい。この店が終わった後に、違うバイトに何度か行ってはやめていると、店主が話してくれた。 「あんな若い子に、夜更かしばっかさせちゃいけねーよ。彼氏がもっと、しっかりしなきゃなあ」  その時の店主の渋い顔は、これまでにない影をたたえていた。
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