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 ツバメがレジ打ちに苦戦している間に、キカリさんが冴えない鞄で出勤してきた。  その顔は大分沈んでおり、いつも明るいキカリさんらしくなく―― 「ハナちゃん、大丈夫か? しんどいなら今日は休んでもいいんだぜ」  ツバメがいるので、店主もそう勧めたのだが、かえってキカリさんに無理をさせることになった。 「ごめんなさぁい! 大丈夫でーっす!」  必死に笑顔を作り、とても焦っている。ツバメと同じように、稼がなければいけない額があるのかもしれない。  それなら仕事を奪うわけにもいかず、最初の約束通り、入れ替わりにツバメは八百屋を後にしたのだった。  もう一つの、夜の仕事は九時からで、何でも「店卸し」というらしい。早ければ今日の内に終わるが、日付が変わることもあるとの話だった。 「それなら一旦……帰って、寝るか……」  たった数時間、簡単な仕事をしただけで、体は酷く動きが悪くなっていた。  人のいる所では気が張っていたのか、裏路地に入ってから突然辛くなった。思わず建物の間に隠れて、膝をついてしまう。 「……うわ。帰るのすらきついな、これ」  体調の悪さに、倒れてから気付くのは、ツバメにはいつものことだった。  ツバメ自身のことよりも、常に周囲に気を向けなければいけない。  異邦者であり、人間でないツバメは、下手を打てば何かに討伐されてしまう。人間の警察であれ、世界の秩序を守る天使などであれ。
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