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それにしても、汐音からの「力」の供給が以前の五分の一だと、これほどすぐに体力が落ちるとは思いもしなかった。
人間界に来てから、まだ二か月もたっていない。汐音の「悪魔狩り」も数回あった程度で、その時は昨夜同様、ツバメはほとんど動いていない。
「まいった……これは、想定外……」
両手と膝をついて、呼吸を乱していると、段々と目の前が暗くなってきた。
現在の不調の原因……昨夜にバイクに撥ねられた時と同じく、視界が奇妙に閉ざされていく。
「……!?」
意識ははっきりしているのに、裏路地が黒に染まった。自分がどこにいるのか、またわからなくなってしまった。
何で……――と。昨夜から繰り返す、これまでにない状況に小さく呻く。
しかし今日は、昨夜とは違う。黒闇の中でポケットからチョーカーを取り出して、すぐさま首に巻く。
これには、ツバメの視力――「直観」も含めた眼力を底上げする力がある。ツバメが身に着ける小物には、そうして必ず意味があった。
たとえば蝶のペンダントには、それが本来の用途ではないが、異邦者のツバメと周囲の言葉が通じるようにする付加効果がある。
元々、周囲の事を五感で得た情報から「直観」できるツバメには、人間が喋る言葉はわかる。しかし自身の言葉までは、相手に伝わるように翻訳はできない。
汐音はできるらしいが、ツバメには無理なので、いつもペンダントの力を借りている。
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