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「あ、ちょっとタンマ! 本屋開いてる、新刊チェックチェック!」 「……」 「あ、このクッション、もふもふー! いつかこれ買って、ツバメー!」 「…………」  商店街を歩くと、あちこちに気を引かれて、汐音の行動は一貫しない。  わざとやっているわけではなさそうで、休日に久々に外に出た引きこもりは、何を見ても楽しいようだった。  傍目から二人は、金髪の外国人の青年と、黒髪の学生服の少年に見えている。ツバメの直観ではそのように、周囲の視界が直接伝わってくる。  人間ならぬ髪や目の色を持つ者が人間界に来る時には、可能なら変身能力などで偽装を勧められる。汐音の姿は、ツバメにはいつも通りに見えているが、外にいる時は妹と同学年の人間仕様であるはずだった。  それでも、周囲の人間達に見えている汐音の顔自体は、ほとんど変わってない。可愛いというより鋭さを持つ美形で、かなり女性的だ。あどけなく透き通る声も高く、声変わりはきていないらしい。  そんな美少年の汐音を連れ歩いていると、ツバメの存在までさらに目立つ。何あれ、微笑ましい、どこのアイドルなどと、無用に人目につき出していた。  先刻とは違う裏路地に汐音を引っ張り込む。人通りが減るのを待とうといさめると、汐音はくしゃっと顔を崩してしまった。 「ツバメのいじわるー! たまにはいいじゃん、これくらいー!」  だから、買い物を邪魔された女の子みたいな涙目で言わないでほしい。  昔は無かった種類の我が侭に、改めてがっくりしたツバメだった。
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