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 汐音とツバメは、ハンターと猟犬といえば、イメージはわりと合っている。  汐音はいつも、前衛をツバメに任せて、後ろから敵に致命傷を与える。  だから今回も、ツバメに先鋒を任せるつもりで、謎の怪物を引きずり出したのだろうが……。 「ちゃんと倒せるようにカタチにしたのにー! この方が『悪魔狩り』っぽいし!?」 「いや……いらないから、そういう演出……」  わりと派手好きな汐音は、後先を考えずに、享楽でこの「悪魔」を具現したのだろう。まずもって、特に美味しそうでない男は、食べたくなかったと見える。  しかし、汐音が構成しただけあって、かなり強大な怪物がそこには鎮座していた。 「武器も無しに……どうやって倒すんだ、これ……」  ツバメの本来の武器は剣だ。けれどこの国では、銃刀法違反になるというので、蝶のペンダントの芯部分として普段は封印している。  その封印を解くことと、剣を使うこと自体が、今のツバメの体力では不可能なのだ。  立ち上がりすらできないツバメをかばってか、怪物の前に汐音がざっと立つ。  それはあまりに、ツバメにとっては許せない光景だった。  廃人を自称する汐音は、持久力がさっぱりない。ツバメもない方だが、それ以上にない。  人払いに加えて、この怪物を具現したことで、既に相当疲れている。つまり二人共、戦える状態にない。  あまりに自業自得な危機が、そこには展開していたのだった。
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