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こうなれば、手段を選んでいる余裕はない。
ツバメ自身に戦う「力」が残らないなら、誰かの「力」を借りる――ツバメ以外に、この体を売るだけのことだった。
今夜のために、一応持って出ていたチョーカー。そして常に腕に巻くバンダナを、ツバメはどちらも、本来在るべき場所へぎゅうっと巻きつけた。
大きな黒いバンダナはいつも、ツバメの目を半ばほど隠してしまう。
一瞬、視界が赤く染まる。黒い目が赤い焔に包まれて熱くなっていく。
これがこのバンダナの持つ「意味」だが、視力を上げるチョーカーを同時につけると、ツバメの目は青光りする黒に戻っていった。
永い約束を違えたことのない、呪われた誰かがツバメに降りる。
「……――さぁ、ShowTimeといこうか、汐音?」
まだ片膝をついたまま、俯くツバメから、無駄に気障な台詞が飛び出る。
にやりと勝手に笑う口元は、それに見合った軽率な声を紡ぐ。
これはバンダナとチョーカーの相互作用で、だからあまり揃って着けないのだが、この状態になると汐音はいつも喜んでいた。
「おっけー、ツバメ! Calling!」
立ち上がったツバメを横目で見て、本来は荒事好きな汐音が、蒼い両目を輝かせている。
ツバメの内には、ある不穏な決意がよぎっているとも知らずに。
――それなら、アイツを喰えばいい。
ツバメをある種、別人にするバンダナとチョーカーだけでは、現状以上の特別な「力」はない。
ここから戦うためには、後一つ、手札が必要だった。
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