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寂しがりの妹は、ツバメを見つけた途端に飛ぶように駆けてきて、ひしっとしがみついてきた。
「何で、ここにいるの……? 兄さん……」
遠い故郷にいるはずが、人間界にいるツバメに、妹は当然驚いていた。
「いや……ちょっと色々、仕事があって」
ツバメはツバメで、妹の見慣れない恰好……髪に揺れる明るいリボンと、可愛い制服姿に心が和んだ。
今日は本当に、色んな相手に会うことができた、面白い良い日だ。
人間にはない紫苑色の髪を、ここでは妹はツインテールにしている。それでも妹は人間で、髪の色がこうなったのは、契約した悪魔の影響といって良かった。
周囲からは何度となく、もう悪魔との契約はやめろと言われている。それでも悪魔を手放さないのは、ひとえに、寂しがりだからだ。
「俺はもう、帰るから。猫羽は早く、挨拶しに行けよ」
この人間界での一人暮らしで、少しだけでも、妹が自立できるといい。それを願ってやまないツバメは、あえて妹を突き放すしかない。
思った通り妹は、久しぶりに会えたツバメに駄々をこねてきた。
「やだ。兄さん、帰っちゃやだ」
本当ならもっと、甘やかしてやりたい。その方がどれだけツバメ自身、楽だったことだろう。
それでも、ツバメにできるのは、妹を見守ってくれる汐音の生活を維持することだけなのだ。
「頑張れ。猫羽なら、大丈夫だから」
まるで自身に、言い聞かせるように。精一杯の顔で、ツバメは笑った。
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