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 鶫と同様、妹のことも早々に振り切って出てきたツバメを、屋敷の外で汐音が待ち構えていた。 「あーもー。オマエって本当、ストイックだねぇ」  塀にもたれかかる汐音は、呆れたように両腕を組んでツバメを見ている。わざわざ懐かしい者に会える時間を作ってくれた汐音に、ツバメは苦笑うしかない。  こうしたことは、ツバメは決して、自らそうしようとは思わないのだから。 「ありがとう。でも仕事があるから、駅に戻るよ」  八百屋の店主をこれ以上、待たせっ放しにはできない。その意味でも、ここでゆっくりしているわけにはいかなかった。  そんなツバメに、汐音は、間違えた。ワーカホリックだ、と言い直していた。 「そーいうとこ、全然成長しないね、お前は」  自称廃人の汐音から、まさかの成長という単語が出たので、思わずツバメは顔を綻ばせた。 「うんまあ。駄目な奴、だし」  汐音はいつも、何も否定しない。人を悪魔と裁きはするが、悪魔になるなとは思っていない。  そうしてツバメのことも、あくまでそのままで使ってくれているのだ。 「お前がそうしたいなら、仕方ないけどさ」  だから汐音は、成長しろとは言っていない。思ってもいないと、以前からわかっていた。 「こんな暇人な、悪魔狩りとか。オレ達みたいなのでないとやんないしねぇ」  それはどうやら、長年独り身の汐音には、感謝の言葉らしい。この罪だらけの世の中に悪魔狩りは必要ないと、汐音はよく言っていた。  悪魔が多数派であるのは、この世界での処世術なのだろう。悪魔でないもの――汐音曰く血がキレイで美味しい者は、キレイであってもおそらく得をしない。汐音のような手合いに目をつけられるだけで、生き残るには不利な要素に思える。  それをわざわざ、一時しのぎでもキレイに留める「仕事」。いくらでもいる他の獲物を無視し、そんな食道楽に付き合う者は、ツバメのような駄目な奴くらいだ。  始めて間もない二人暮らしに、思った以上に苦戦しているツバメは――  その汐音の笑顔だけで、この人間界での生活をもう少し頑張れる気がした。 Case.K 了 <妹話>https://estar.jp/novels/24829932/viewer?page=1
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