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 働くのはツバメの役目。その契約を催促すらせず、いつ破綻しかねない生活の中、猫缶の数も気にせず安寧に眠れる汐音の精神構造は常に謎だった。  例えばの話、野良猫という奴は、とても気まぐれだ。大概は餌がないと、早々に何処かに去ってしまう。  汐音の一番の幸せは、猫とぬくぬく寝ている時だと言い、逃げられてしまうとしょんぼりと涙目で枕を抱えている。  今は土曜日の夕方で、ツバメの都合で学生をする汐音の休みは、明日いっぱい続く。汐音の安らかな眠りを守るためには、明日の分の猫缶が必要だろう。  ツバメと汐音は、人間ではないので食事は必要ない。人間ほどに汗もかかないため、服の替えは最低限で、入浴する日も少なくしている。それで何とか、この八畳ワンルームの生活は成り立っていた。 「――あれ? ツバメ、また外出るの?」 「仕事、探してくる」  昼も夜も、平日も休みも関係なくツバメが自主的に働くことに、心から不思議そうな汐音が、逆に不可解だった。  猫がいないとぐずるわりに、いなくなる可能性を心配しない汐音は、本当に気楽としか言えない。  元々女性的な顔立ちは、泣き顔など特に可憐で、とても居た堪れない気持ちになってしまう。できれば見たくないものの一つだ。  そうしてまた今日も、慣れない夜の町へと、一人で出たツバメだった。 *
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