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早朝の静かな空間に、課長がファイルを捲る音がパラパラと響く。
朝一のミーティングルーム。私と高田くんは並んで座り、課長が口を開くのをじっと待っていた。
「うーん、悪くはないんだけど。もう一捻り欲しいような気もするな」
千石さんの個人美術館。その最終打ち合わせが、来週に迫っている。
それなのに、美術館の決め手となるものをなかなか思いつかず、私たちは焦りを感じていた。
「そうなんですよね。『誰もが気軽に入りたくなる美術館』っていうコンセプトをもっと活かしたいんですけど……」
「この分野に興味がない人も取り込みたいんだろ。芸術以外のアプローチも考えてみたら？ そこから展示してある作品にうまく誘導できるような」
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