第八章 運命のつがい

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 そ、そんな……! 「諦めろ、奴は叩き落とされた、ワープ中に宇宙空間へ落とされれば流石に助からない」 「なんてこと……それでもお前は人間か!」 「あぁ俺は少なくともミュータントではない。人間だ。そして人間同士、お前とつがいになるんだよ」 「ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな!」  俺が喉が枯れるまで叫んでも、沼間はにやりとするだけで、俺は俯くと、涙が後から後から零れて、俺は声を上げて泣いた。  そんな俺の叫ぶような鳴き声も、第二ワープ、第三ワープの繰り返す音が、かき消す。  第五ワープの走行中それは起こった。  もう火星は目の前にあり、ワープの必要はなくなったが、船内が赤いランプで照らされている。  火星は地球よりも小さく、地球からの水の移動や移植の歴史が数百年もあり、地上には大気が生成されていた。   「な、なんだ? どこか故障でもしたのか」 「右舷ヌクリアエンジンにトラブル発生・右舷ヌクリアエンジンにトラブル発生」    次の瞬間機体からドーンと大きな音が響き、船全体が地響きのように揺れる。 「まずい、このままでは火星の重力に引っ張られて落ちるぞ!」  やはり誰も口にしていないが、この小型の宇宙船では火星まで行くのに無理があったんだ。原因はわからないけれど、月までの渡航記録しかないと言っていた……。  かつての火星以上に大気が増えたとは言え、まだ手放しで地表に生身でおりることはできない。  重力も地球に比べ三分の一とはいえ、機体が引き込まれれば危険であることに違いはない。  船が不自然な方向に傾き、天地が逆になったような気がした。  目の前のモニターに火星の地上が広がる。そこには大きなドーム状の建物が幾つか並んで建っているようだ。
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