第八章 運命のつがい

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(俺、今凄い混乱してる……頭の中で上手く整理ができない) 『そうだよな……』 (でも一つだけ、お前の目をモニター越しに見てわかった。琉だって思った……)  俺の言葉にしばらく間があったが、琉のふふ……と微笑んでいたような声が聞こえた。 『……ああ、俺は俺だ』 (じゃあ何も問題ない。よかった。俺はお前がお前でいてくれたら、もう何も問題ない。俺はずっと自分の中に偏見を持っていた。俺のエゴだった。人の事を考えられるような人間じゃなかった……。でも自分がオメガだとわかって。色々なことがあって、今になってわかったことが沢山あって。反省しなきゃいけない……) 『アヤト……』 (ん?) 『沼間にあれこれ吹き込まれても、もう惑わされないで欲しい。俺を信じて欲しい……。そして……もう俺の傍から離れないで欲しい……』 (わかった。もう俺、琉の言葉だけを信じるようにするよ……) 『あぁ……』 (琉……会いたいよ。琉に会って直接今までの事、謝りたい……) 『……わかった』  その時機体が大きく揺れた。目の前のモニターは機体が所定の位置についたのか、ワープをしようしている。  機体全体に大きな音が響き渡る。    俺は後ろ頭を擦りつけて必死で口を塞がれていたハンカチを取り除く。  周りの奴らは琉のことで頭が一杯らしく誰も俺に注意を払っていない。  俺は必死で暴れたが、シートベルトが体に食い込んで席から立つことはおろか動くことさえできなくて歯がゆかった。 「やめろー! 琉が船外にいるんだ、よせっ!」  目の前にあった星々の光が瞬時に流れる。  一度目のワープで目の前に大きな月が現れた。  モニターの中に映っていた琉の姿はなかった。  確認なのかあちらこちらの船外モニターが宇宙船外の様子を映しだしたが、琉の姿はない。 「よし、なんとかふるい落とせたようだな」 「これより月から指示された第二ワープ地点へ移行……数回のワープを経て火星へ向かう」 「琉っ、琉--!!」
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