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「……課長は、ご存知だったんですね」
私の言葉に、課長が息を呑むのがわかった。間違いない、課長は知っていたのだ。
知らなかったのは、私だけ? 想像もしなかった現実が、深く私に突き刺さる。
私は一度きつく目を瞑り深呼吸をすると、馨さんの方に向き直った。
「馨さん、これは三浦さんの絵ですよね?」
「……ええ、彼の昔の作品です」
「麻倉!」
ふいに眩暈を感じ、私はその場に座り込んだ。
キャンバスの中で、私に似ているけれど、私ではない誰かが眩しい笑みを浮かべ、私のことを見下ろしていた。
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