そのままの君に

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 オフィスに入り照明のスイッチを入れると、山積みだった書類やファイルが仕舞われ、すっかり片付いた課長席と、その周りに積まれた段ボールが目に入った。 「……寂しくなりますね」  高田くんもどうやら私と同じものを見ていたらしい。心細そうな表情で、ぽつりと呟いた。  課長は正式に本社異動が決まり、年内で支社を去ることになった。最近は取引先への挨拶回りに忙しく、定時を過ぎないと社に戻らない。ここ数日は私も、課長とほとんど顔を合わせていなかった。 「実は僕、課長と一緒に麻倉さんも東京に戻るんじゃないかって思ってました」  突然高田くんに言われ、パソコンを立ち上げようとしていた手を止めた。
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