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「まだ帰ってなかったのか」
「……すみません」
「いや、責めてるわけじゃないけどさ」
頭上から、課長が深く息を吐き出す音が聞こえた。
「大丈夫か」
その一言で、課長がどんなに私のことを案じているのかがわかる。でも今の私には、いつものように強がってみせる元気はなかった。
「……課長」
「なんだ」
「課長は……知ってたんですよね、三浦さんの以前のモデルのこと」
「……ああ。ずっと言えなくて、悪かった」
少しの間を置いて、課長は、私から目を逸らすことなく肯定すると、すっと頭を下げた。
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