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「ちょっと前に麻倉と外で会ったとき、俺資料みたいなの見てただろ。麻倉は俺が仕事してると思ったみたいだけど、あれ三浦さんの昔の作品が載ってる美術雑誌だったんだ」
自分の気持ちを伝えようと、課長をダイニングバーに呼び出したあの夜のことだ。
たまたま書店で三浦さんの画集を見かけて、気になって昔のことを調べたらしい。
あの日、私が課長の様子に違和感を感じたのは、そういうわけだったんだ……。
「課長、あの絵のモデルは――私とよく似た女性は、一体誰なんですか?」
「あの人は……三年前に亡くなった三浦さんの婚約者だ」
「……婚約者?」
三浦さんが人物を描けなくなったのは、彼の婚約者――日菜子さんの死が原因らしい。日菜子さんが亡くなるまでは、三浦さんは彼女をモデルに、たくさんの作品を描いていたのだと聞かされた。
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