第二話 剣と被害者

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「私を助けても何もならないよ。それに命を助けてもらった了に危険な目に合わせるのは・・・」 「ムクみたいな良い奴をほおっておけないよ。それに傷も治っていないだろ、だから手伝わせてくれ」  そして了は頼むと頭を下げた。  了の態度にムクは少し考え込みこちらこそ頼むと言った。その言葉に了は感謝した。ムクはあることに気づきハッとする。 「そう言えばどうやって会えばいいんだ?」 「それについていい考えがある。任せておけ」  了はムクに作戦内容を話す。それを聞いたムクは不安そうだ。 「いけるかなぁ?」 「大丈夫でしょ、作戦は明日行う。薬でも塗って明日に備えるぞ」 「分かった」  塗り薬をムクに手渡し横になる了。ムクは塗り薬を受けとり傷にぬる。 「私は寝る」  了は話を終えると疲れからすぐ寝た。  次の日、ムクは人里にいた。この世界の文明は大正初期レベルである。人里の街並みは日本の大正風景に似ており、生活する人々の服装も和服である。それらの理由はこの地の文明をもたらしたのが日本人であり、またこの世界にきた妖怪は日本の妖怪が多いためでもある。多くの者がそれを模倣した結果、今の大正風景になった。  勿論人間世界の大正時代とは全く異質なもので要するにそっくりさんみたいなモノである。ちなみにムクの服装も和服である。西洋や現代の物も存在するが少し珍しい。  ムクは朝から昼までろうそく屋で働き、昼ごろには呉服屋にいた。ムクは呉服屋の店員の友人と親しく喋っていた。 そんなムクの様子を了は少し離れた所で隠れて見守っている。ムクは襲われた日と同じ行動をしていた。  了の立てた作戦はムクが無事であることをアピールして、襲った者をおびき出すものだ。 「今のところ何もないな」  了は少し安心したが周囲の警戒を怠らなかった。  夕方、ムクは人里を出て暗闇の森に続く道をうつむきながら歩いていた。 「!!」  道の端にに血の跡があった。ムクは辺りを見渡し自分が襲われた場所だと気づいた。ムクは血の跡を見て襲われたときの事を思い出し恐怖した。「やあ」  ふと誰かに声をかけられた。ムクは驚き顔を上げ周囲を見渡す。道の木々に背負預けているポニーテールし鮮やかな青の袴に仮面をつけた人がいた。ムクは眼を開いた、相手は刀を持ちなおかつ襲ってきた奴と同じ仮面をしていたのだ。ムクは動揺した。それを見て仮面の人間は笑う。
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