第二話 剣と被害者

8/14
前へ
/204ページ
次へ
「クソっ!」  了は悪態をついた。結界の力で妖怪であるムクを連れて逃げる事が出来なくなった。 「急ごしらえの結界ゆえに、そこの弱小妖怪しか留める事しかできんがお前は見捨てて、逃げることはしないだろう」  そう言う葉月の言葉に了は歯噛みした。葉月は了の予想以上に強かったのだ。了は焦っていた。葉月の戦い方は封魔の戦い方であり、霊力を帯びた刀相手では人外の力を得る<オーガ><グリフォン><ドラゴン>のカ-ドは弱点になるため迂闊に使えない。そのため隙を作らなければならない。  了のそんな考えとは裏腹に葉月の攻撃は鋭く避けるのも難しくなっていた。 「死ねッ」  さらに葉月は短刀を取り出し投げた。了は突如の行動にムクに危害が加えられたと勘違いし一瞬視線をムクに移してしまう。ムクは無事であったが、隙を作ってしまった。もちろん葉月は見逃さなかった。刀は了の腹部を斬った。地面に血が飛び散った。了は痛みに耐え腹部を抑えるもバランスが崩れてしまい倒れてしまった。 「ギャ嗚呼アアア」 「これで終わりだな」  葉月は了に向かって刀を叩き付け様とした。 「危ないッ!」 「グウ!?」  ムクは自らの頭を掴みボールの様に葉月に勢いよく投げた。首無しろくろ首だからできる芸当だった。葉月はムクの頭を横から喰らい、態勢が崩れ隙を作った。了はこの時を見逃さずカードを発動した。  <グリフォン>了に翼が出現した。  了は突風を起こし葉月を吹き飛ばす。しかし葉月はとっさに片翼に一閃を放った。それでも風には耐えられず葉月は吹き飛ばされ地面に叩きつけられた。了は人外に変身したことにより腹部の傷から出血は収まったが疲労は途轍もなかった。ムクの体がやってきて頭をつけ了を心配する。
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加