第二話 剣と被害者

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「しかし、そうはならなかった。大災害によって人間と妖怪が和解、共に生きることになり、それに伴って封魔は活動を停止。解散になった。多くは解散になることを喜んでいた、戦う事が無くなるからな。平和いいことだ」 「しかし葉月ちゃんは妖怪と和解することを嫌がった。まだ妖怪が残っている、戦わなくてはならない、とね」  ムクは顔ふせてミヅクの話を聞き続ける。 「私たちは葉月ちゃんが問題を起こさない様、説得を試み様とした私達に対して葉月ちゃんはこう言ったんだ。【私の家族は妖怪に殺されました。共に戦った友人の多くも妖怪に殺されてしまいました。それでも戦ったのは妖怪がいない世界にするためでした。誰も妖怪に傷つけられない世界を・・・、なのに今になって和解だなんて殺された家族や戦いで死んだ友人は何なんですか・・・。戦った私は何も得てません・・・あまりにも惨めすぎる。】そう言ったその後しばらくの間行方を暗ましたが、人里で暮らし呉服屋で働いてると知り、何とか生きてるとかわかり安心したが・・・」 「それが葉月が妖怪を恨む理由・・・」  何もかも失った葉月を思い、ムクは悲しみに満ちた顔になる。 「しかしなぜムクを襲ったんだ?」  了の疑問にミヅクは少し考え答える。 「おそらく、知らずのうちに妖怪と友達になっていたことに対して自分自身とムクちゃんに怒りを感じて今回の凶行に至ったんだろう。今回の事は私が葉月にきつく言っておくよ、私も封魔の一員だったし、それに一時期は葉月の上司でもあったからね」  了とムクは、ミヅクが封魔だと分かりギョッとする。 ムクは恐る恐る尋ねる。 「あなたは葉月の様に妖怪を恨んでいないんですか」 「恨んでたよ、私も大切な人が殺されてねそれで封魔に入った。しかしな、恨み辛みを持って戦ったり生きたりすることに嫌になってな・・・全部忘れることにした。悲しいことだけどさ・・・」  そう言うミヅクの顔は暗い。葉月の様に悲しい体験をしたからだ。 「その後は戦いとは無縁の医療に携わる事にした。私の霊力や札で大体治せるしな」  そう言い、笑うミヅク。その笑顔ができるまでどんだけ苦労したのかと了とムクには想像できた。 「お話しと治療をしてくださり、ありがとうございました。」  了は懐から金を渡そうとするがミヅクに要らないと言われてしまった。
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