第一話 青い月と不思議なカード

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「決まっているだろ。人を恐怖させるのは化け物の性だ、ここがどこであろうとな」  さも当たり前のように答えた。その言葉には蔑み、見下しといった感情が含まれており、了は少しの不快感を感じた。しかし事を荒立てたくない思いもあり、頭を下げ頼んだ。 「どうかやめてくれないか、人が怯えている」 「嫌だね。弱者の言うことなぞ聞けるか」  了のその態度にブルーは鼻で笑い、頼みを断った。吸血鬼のプライドがそうさせた。ブルーの返答に了は頭を上げ、ブルーを威圧する。 「どうしてもか」 「どうしてもだ」  ブルーの拒絶の言葉に了は力強く答えた。 「どうしてもやめないというならば、私はお前と戦ってまでやめさせる」  了はブルーを見据える、吸血鬼に対する恐怖はなかった。ブルーはその言葉に苛立ちを覚えた。 「力ずくというわけか。できるのかただの人間ごとき」 「ただの人間それはどうかな」  ブルーの言葉を遮り毅然と答える。弱者の囀りにブルーの苛立ちは頂点に達し、了を殺す事に決めた。 「ならッお前の力見せてもらおうかッ!」  その言葉と同時に了に飛びかかり、顔面にパンチを放った。その瞬間奇妙な音声が流れた。 <アイアン>  ブルーの拳は了の顔に直撃した。了は壁に叩きつけられ、分厚い壁は衝撃で大きく音を立てて崩れた。普通の人間にはできない、吸血鬼の力のなせる業だった。ただの人間なら今の一撃で死んでいることだろう。しかし、ブルーは浮かない顔をしていた。  「何だ今の音は・・・そして当たった時の感触・・・」  自分の手を見ながらブルーが不思議に思っていると、崩れた瓦礫の山から音がした。ブルーは瓦礫の山をみる。そこには五体満足の了が立っていた。
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