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大人気の三ツ星レストランをふた月前から予約していた。
なけなしのお金をはたいて、グッチのブレスレッドも買った。
バイトを倍に増やして、やっと買ったものだった。
それも、みんな彼女の為だったのに……。
「あ~っ!ちくしょう!」
僕はやり切れなくて、悔しくて、泣きそうになった。
何が悲しくて僕はこんなとこで、うなだれていなけりゃならないんだ!
その時、何か物音が響いた。
「あの、離して下さい……」
か細い女の声だった。
「お嬢さん、俺もこんなことしたくないんだよ~。君が素直に渡してくれればいいんだよ?アレをさ」
対するは、野太い男の声。
若い女性に、強引に何かを迫る男……。
これは、どう考えても穏やかじゃない。
放っておけばいい。
でも、僕は悲しいくらいにおせっかいな男だった。
「おやじ、ツケにしといて」
そう言うと、僕は暖簾を潜った。
「いや!離して!」
少女がそう叫んだ瞬間。
僕は男の背後から、思いっきりボディブローを仕掛けた。
男は不意を付かれて崩れた。
「あ……あなたは……?」
見ると、綺麗なブロンドの髪に、漆黒の瞳の美しい少女だった。
僕はちょっと心が動かされた。
いや、ちょっとどころじゃない。
この子の為だったら、命を賭けてもいい。
そんな風にまで思った。
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