前編

3/5
前へ
/12ページ
次へ
「残念ながら、自己紹介している暇はないぜ。君、走れるか?」 少女は小さく頷いた。 「いちにのさん!GO!」 僕は少女の手を引き、思いっきりダッシュした。 路地を一本、二本、三本……。 どんどん聖夜の街を駆け抜ける。 白い雪の舞う街を……。 どれくらい走ったのか。 目の前に倉庫郡が並んでいた。 「はあ……はあ……。ひとまず、そこの倉庫に隠れようか……」 「……はあ……そうですね……」 僕は少女を倉庫内に、連れて行った。 「ふう、これで一安心かな?」 少女はこくんと頷いた。 改めてみると、少女の美しさはとてもじゃないが、言葉では言い尽くせないほどだ。 僕は顔が赤くなってしまっていないか、気になった。 「さてと……。どうしたものかね?これから。君、家はどこ?」 少女は首を横に振る。 「まあ、今家に帰っても、あいつらがいちゃやばいよな。う~ん。僕の従妹のとこに泊まるかい? 安心しな。生物学的に言えば、女だよ。見た目も性格も、ま~ったく色気に欠けるがね」 少女はぽつんと言った。 「聞かないんですか?どうして、追われているのか……。それに、どうして助けてくれるんですか?見ず知らずの私を……」 「いや~。僕、人のプライバシーには立ち入らないってのが、ポリシーだからね。困った時は、お互い様でしょう?」     
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加