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僕は大声で叫んだ。
まったく、今日の僕はどうかしている。
普段だったら、確実に逃げ出しているのに。
この少女が勇気をくれたようだ。
僕は立ち上がった。
その時、かすかに背後から風を感じた。
そっと盗み見ると、そこには別の出口らしいものがあった。
しめた!
「メイヤ!逃げるんだ!後ろのドアから!!」
僕は叫んでいた。
「でも!」
「早く!」
少女は戸惑いながらも、出口に走り出した。
「このガキ!どけ!」
「いやだ!!」
「どけったら!こいつが目に入らないのかよ!」
男は拳銃を見せた。
「いやだ!」
「こいつ~!」
もう僕と男は押し問答になっていた。
その時、拳銃が火を吹いた。
男自身が豆鉄砲でも食らったような顔になった。
撃つ気はなかったらしい。
いわゆる、事故。
暴発ってやつか……。
胸の辺りに、焼けるような感覚。
僕は思わずその場に崩れた。
「隼人さん!」
少女の叫び声。
ざわめく男たち……。
胸が痛い……!
素早い足音がした。
「しっかりして下さい!」
少女が僕を覗き込んでいた。
きらきらとした涙が、彼女の頬を伝っていた。
ああ、やっぱり綺麗な顔だ。
頼むから、そんな顔しないでくれよ。
こっちまで、悲しくなるじゃないか。
それにしても、僕はここで死ぬのかな……。
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