きっかけ

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きっかけ

※大学生。酒は飲んでも飲まれるな 【きっかけ】 ちゃぶ台の上に無造作に並んだチューハイの缶に手を伸ばし、プルタブを開ける。 「サークルのコンパみたいに大勢で飲むのも楽しいけど、こうやってまったり家飲みもいいな。」 そう、一緒に飲んでいる環に話しかける。 「つまみがしょぼいのが難点だけどな。」 「まあ、俺もお前もそんな食わないから別に良いだろう?」 たわいもない話をしながら次々と缶があいていく。 俺も環もいつになくハイペースで飲んでいる。 気の合う奴とこう何気ない時間を過ごすのはなんか楽しい。 ベロベロになって、そろそろ寝るかとなった頃、環が 「達也ー。何かさみしい。」 ああ、酔っぱらうとなぜか妙に寂しくなる時ってあるよなあと環の方を見る。 「もう、半年も彼女できないしー。くそー。」 酔っぱらって語尾が伸びているが、正直お前がやっても全然可愛くない。 「はいはい、お前ならすぐにできるから、大丈夫、大丈夫。」 「何か投げやりじゃねえ?くそー。」 ずりずり、と座ったままこちらに近づいてくる環に、あー、絡み酒かめんどくせーと思っていると。 「さみしー。」 と言いながら顔を近づけてきて…。 チュッとリップ音をたてて唇を合わせる。 クソっこいつやりやがった。 「奪っちゃったー。」 何かがツボに入ったらしい環はけらけらと笑っている。 「クソ酔っぱらいが。」 えへへーと笑いながら腕を伸ばしてきて後頭部を固定される。 やばい、やばい、頭では分かっているのに、酔った体が上手く動かない。 「ちょっ、マジでやめろ。」 俺の抵抗も空しく、唇が合わさり、今度は舌までねじ込まれる。 そのまま、舌で口腔内を舐めまわされる。 何度も角度を変えて重ねられる、口元から唾液があふれこぼれているのが分かる。 「んっ、ふぅ、ん。」 やばい、やばすぎる。何か、女みたいな鼻から抜ける声出たよ。 焦って背中をどんどんと叩くと、ようやく離れっていった。 「えへへー。気持ちよかったな―。」 にやにや笑いながらごろごろしていたかと思ったらこいつ寝やがった。 クソ、文句を言いたいとか色々あるが、とりあえず今は、動悸がすごいこの心臓と茹でダコかってくらい真っ赤になっている顔をどうにかするのが先決だ。
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