初恋はマフィンの香り

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*** それからだ。わたしのなかに塚本くんが居座り始めたのは。 隣の席だった塚本くんは、翌週の席替えで机をふたつ挟んで隣の席になった。 ……遠い。 これじゃあ班だって同じにならないし、会話する機会もめっきり減る。 誰にも気づかれないように、はぁ、と小さくため息を吐いた。 それから、お菓子を作る回数が、ちょっとだけ増えた。 塚本くんに、また美味しいお菓子を食べてもらいたいから。「美味い」って言ってほしいから……。 さらに、妄想という名のシミュレーションもたくさんした。 もし駅前でばったり会ったら…… もし、両想いだったら…… もし、デートで映画を見に行くなら…… もし、塚本くんの家に行くなら…… 頭のなかではわたしは積極的。でも本物を目の前にするとなかなか話しかけられないのが現状。
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