116人が本棚に入れています
本棚に追加
序章:暗闇の中で
誰かが輝く。栄光という光の中で、光輝く。私はそれを陰でただ、見つめる。それから誰にも気付かれることなく、皮肉げに唇を歪めた。
今さら羨ましくなるなんてーー
そんな思いが浮かび上がる。かつて私がいた栄光と言う光の舞台。そこで走り続ける他の人が今さらながらに羨ましくなるなんて思いもしていなかった。それから私はその舞台に背を向ける。羨ましいからではない。その地位を望んでいるからではない。もうその地位は私には得られない。与えられない。ならばどうしてなのか。その理由は簡単だ。私の向かうべき場所はその逆、それだけである。
どこまでも深く、深く、最悪の絶望の、さらにその先へ。絶望のどん底をさらに掘り下げて、その先を見る。どこまでも、どこまでも。それが私の望みであり、希望だ。誰もたどり着けなかった、本当のどん底へ。だから栄光は見たくない。欲しくなる、欲しくなる。かつて私がいた舞台が、光輝く栄光が。それを求め、私は反対側へと手を伸ばす。ああ、なんて愚かなのだろう。なんて愚かしいのだろう。
誰か、誰でもいい。こんな私は救ってくれ。呪ってくれ。
私が私であれるうちにーー
最初のコメントを投稿しよう!