116人が本棚に入れています
本棚に追加
「かしこまりました、ルーグさん。
と言われましても、あらまし説明は終わりました。あとは直接ルーグさんがイグニスを見て学んでいくことをおすすめします」
ウリエルはそんなことを言い、ポケットから何かしらの機械を取り出す。そこには怪しい赤いボタンがひとつだけついている。押せ、って自己主張しているかのように。そしてこれを押したら爆発する、と。
「これを押したらルーグさんはイグニスへ転移できます。心の準備が出来次第、押してください」
「………ある意味爆弾だな」
手渡されたスイッチを見て俺は苦笑する。どう見ても自爆スイッチにしか見えない。あながち間違ってはいないのだろうけど。
「武器とかそういうのはないのか?」
手ぶらでイグニスへ向かうのもどうかと思い、俺はウリエルに尋ねる。
「剣、というか刀はあります。ありますが、いります?イグニスだとたぶん役にたちませんよ」
と、一振りの刀をポケット(!?)から取り出す。刃渡り1メートルくらいだろうか。絶対にポケットに入る大きさではない。断じて入らない。抜き身なので入ったとしてもかなり危険である。
真っ黒い刀身よりどこからそんなものを取り出した、と俺は唖然としつつ、一応受けとる。
「その刀の銘はありません。付与されている能力は切断能力向上と自己修復の二つです。手入れの要らないよく斬れる刀、と思ってください」
「それは楽でいいな。いいけど………」
ポケットの秘密が気になる。
「ではそろそろスイッチをポチりといってください」
ウリエルに言われるまま、俺は赤いスイッチを押す。すると俺の体がゆっくりと透き通り始める。
「あ」
そこでウリエルが何かに気づいたように声を出す。その声に俺は嫌な予感がした。
「………この空間、どうやって外に出ればいいのでしょうか?さっき遠くまで飛んでいった時も景色変わらなかったのですが」
泣きそうになりながらウリエルがそんなことを訴える。
「俺が知るかーー」
ほとんど目の前から景色がなくなる。転移が終わりかけているのだろう。
「あ」
最後にウリエルのこんな呟きが聞こえる。
「転移位置情報、確認してませんでした」
「ちょ、それはーー」
やばいだろ!?と突っ込み終わる前に俺の意識は完全に闇に飲まれた。
最初のコメントを投稿しよう!