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ルーグSide
「うわああああああ!」
俺は絶叫しながら今まで感じたことのない浮遊感を全身で感じていた。もっと正確に現状を説明するのなら、パラシュートのないスカイダイビングを行っていた。
理由は単純で、転移した先が地面の遥か上空だったのだ。当然重力に引かれ、落下する。そんな現状を知った俺は、叫ばずにはいられなかった。スピードは時速200kmに達しているのではないだろうか。それを悟った瞬間、俺は叫ぶのをやめる。というか、生き残ることを速攻で諦めた。
元々死んだ身だ。それが本当になるだけ。そんな感じで自分を騙した。というか、送る相手をいきなり殺してどうする、ウリエルさんよ。
しばらくして、俺の体の周囲に風が渦巻く。お、と思っているとその風が俺の落下速度をゆっくりと仲裁し、地面に着く頃には30cmくらいの段差を飛び降りた時の最終速度くらいの速さになっていた。俺はそのまま軟着陸する。
「ちゃんと着地のための魔法が付与されていたのか」
その事実に胸を撫で下ろす。さすがにいきなり殺すような真似はしなかった。こんな心臓に悪いことはしてほしくなかったが。
「さて………」
周囲を見渡す。緑色の地平線が広がっていた。それ以外何もなし。文明が進んでるなんて言ってたからどんな摩天楼が現れるのか楽しみだったのだが、ただの草原が広がっているだけである。これのどこに文明がある、というのか。
「………まあ都市部じゃないんだろう。日本にだって草原くらいある」
こんなでかい草原があるかどうは別として、どんなに文明が進んだ場所だって緑は必要だ。
けど、こんなところに放り出されたところでどうしろというのだろうか。目的地もなく、方角もわからない。ウリエルに聞こうにも連絡を取る手段が不明である。仕方ないので手に持っていた刀を地面に立て、倒れた方向に進むことにする。
刀を地面い突き立てる。するとどうだろうか。一向に倒れる気配がない。地面に突き刺さり、倒れなくなっていた。
「………適当に進むか」
諦めて俺は適当に歩き出す。ちなみに人間は本能的に目標がないと滅茶苦茶に蛇行しながら進むらしい。こんな目印のない場所だと俺も同じ現象にあいかねない。
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