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???Side
頭の中がぐるぐるする。何が起きたのか、まるで思い出せない。なぜ寝ているのかーーそれすらもわからない。朝、起きた記憶はあるのに眠った記憶はない。混濁した思考の中、俺はゆっくりと何が起きたのかを思い出そうとする。
思い出せるのは光。ライトがまっすぐに俺を照らす。そのライトに照らされた俺はそれが迫っていることに気づく。けたたましく鳴り響くクラクション。その音を思いだし、俺は何が起きたのかを思い出す。
自動車だ。自動車が俺を轢いた。わずかに反応の遅れた俺は完全に逃げそびれ、宙を舞った。それ以降の記憶は、ない。
ガバッ、と俺は身を起こす。
「がっ」
が、それは叶わず、僅かに呻いて目を開ける。全身が痛い。どうやらなんとか生きていたようだ。全身の痛みがそれを証明している。勘弁してもらいたいほどの激痛である。俺は目だけを動かして周囲を確認する。見たことのない、白い空間。あまりにもなにもなく、病院の病室とはとても思えなかった。
「ようやくお目覚めか」
上から声がした。そちらに視線を動かすと、見たことのない上半身が裸の男がいた。顔は整っているーーのだろうか?うまく認識が出来ない。頭が働いていないのだろうか。
「気分はどうだ?」
そいつが俺に語りかける。なんとか口を動かして俺は答える。格好はあれだが、医者か何かだろうから嘘をつく意味はない。
「最悪だ。全身痛い………」
「だろうな。全身の骨という骨が折れている。むしろ生きている方が不思議なくらいだ。運よく内蔵とかを傷つけることがなかったからだろうな」
俺の言葉に男は頷く。かなりの重体らしく、生きているのが奇跡なのか。
「ああ、俺の自己紹介がまだだったな。ま、俺はお前たちからしたら神、と呼ばれる存在だ。認めたくないのなら好きに別の名前で呼んでくれて構わない」
男ーー自称神がそんなことを告げる。医者で厨二病なのか………。残念すぎるだろう。だから俺はそんな間抜けに適当な言葉を放つ。
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