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「信じる気になったか?」
男が俺に尋ねる。迷った末、俺は黙って頷く。あり得ない現象なのは間違いない。なら今は信じて、話を進ませる。
「その神様が俺になんか用があるのか?」
その上で俺に近づく目的があるはず、と本題を切り出させる。
「ま、ちょっと野暮用ーーというか、困ったことになっていてな」
と神が曖昧な表情を浮かべる。
「オレは神だ。神であるからこそ世界を管理する義務がある。まずはこれを了承しておいてくれ」
前提としての話をしてから神は目的を述べる。
「オレの管理している世界のひとつが危機に瀕している。それを救う手助けをしてほしい」
なんと、ここでまさかのテンプレ展開が来た。オレは思わず目を瞬く。
「嫌だよ。神様なんだから自分でやればいいだろ」
あまりの展開に俺は速攻で辞退する。なんでお約束的展開に俺が付き合わねばならん。
「それが出来たら苦労はしない。オレ達神簇は基本的に世界に不干渉なんだ。だからこうしてオレ達の息のかかったやつを送り込んで危機を脱しようとしている」
その説明に俺は首をかしげる。
「俺をここに引っ張りこんだのは世界に干渉してるんじゃないのか?」
「死にかけている奴を拉致しただけだ。お前みたいに信仰深くなく、まだ若い人間が死にかけることなんてまずないから探すのには苦労した。代わりに人形を用意した。この程度の干渉ならなんの問題もない。死ぬ予定だった奴が人形に変わっただけだからな」
それを聞いて俺は目を細める。
「地球上で俺は”死んだ”ってことか?」
「ああ。だから帰る場所はないぞ。この話を受けないのなら消すだけだ。邪魔だからな」
退路はない。そのことを暗に告げられる。
「………わかった。お前の手助けをする。治療してもらった恩もあるからな」
未だに何かからくりがあるのではないか、と疑いながらも俺は神に了解の意を伝える。
「助かる。それではお前に詳細を説明してくれる天使を紹介しよう」
神がそう告げ、再び右手を伸ばす。
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