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「行ってもらう世界だとその程度の力、平均よりちょいと上くらいだ。人の中にもっととんでもなく上のやつらが五万といる。気にすることじゃない」
なんでもないことのように神が告げる。まだ上がいるのか、と俺は驚きつつ、この程度ならチートではないらしいことにほっとする。
「うう、なんですか、もう」
むくり、と少女が起き上がる。結構ド派手に飛んでいたわりには無事らしい。顔にはひどい痣が残っていたが。あと涎の跡も。その顔を見ないように俺は顔を逸らす。
「仕事だウリエル。イグニスに送り込む人物の候補が見つかった」
神がそう告げると少女ーーウリエルはめんどくさそうに俺を見る。
「おお、なかなかのイケメン!これはなかなかそそります………!」
するとウリエルは涎を拭くような仕草をする。思わず俺は一気に距離を積め、顔面にドロップキックをかました。想像以上に身体能力が上がっている。くるりとその場で一回転してから着地した。
ウリエルは水平方向にまっすぐ飛んでいった。そのまま姿が見えなくなる。………ここ、そんなに広いのか?
「おいこら、さりげなく逃げようとするな」
「あててて………!」
とたん、神が右手を突き出す。するとどこからともなくウリエルが現れる。思いきり頭を握られている。ミシミシ、という音が聞こえてきた。
………どんな握力してるんだ、こいつ。
「仕事だ仕事。こいつにイグニスの説明と魔法の使い方を教えてやれ。それからしばらくの間のサポートだ」
「勘弁してくださいよ。30連勤からようやく休みを貰えたのにいきなり仕事入るのは………」
神がウリエルに仕事をしろと告げるとウリエルはとんでもなくブラックな内容を口にする。
「文句なら他の奴らに言え………。あいつら仕事サボりすぎなんだよ畜生が!なんであんなやつらばっかりなんだよオレの部下はよお!」
神が吠える。俺はもうなんと言ったらいいのかわからず、無言を貫く。
「ほんとですよ!なんで新米が一番仕事するべき、と全部私に押し付けるんですか!自分達は遊んでるくせに!」
今度はウリエルが吠えた。こっちもこっちで苦労人らしい。もうほんとどうなってんの………。
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