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第26章
光のない、冷えた虚ろな瞳。
彼は長い間思いつめてきた復讐を終えた。
なのに、後悔という足枷が外れないまま、心が暗く深い闇の中に沈み込んでしまっているようだった。
目の前に栞がいることすら、実際はよく理解していないのかもしれない。
栞のよく知る、あの王子様とは違う。
でも、これもまたカイトの一面なのだ。
こんな姿になった彼に、なんと声を掛けたらいいのだろう。
日は更に傾き、赤い色を帯びてきた。
護衛の人たちは微動だにせず、カイトと栞を見守っていた。
晴れて一国の王となったカイト。
でも栞にとっては、日本で出会った美しくて強くてやさしい人。
何度も栞を守ってくれた人。
その人が、今は手を後ろに隠してしまっている。
その手を取りたい。
取って体温を通わせたい。
栞はゆっくりとカイトの背中に回った。
そして、固く組まれた手に手を重ね、そっと語りかけた。
「わたしは、あなたの怒りを受け入れます」
カイトの背中がぴくんと動いた。
「わたしは、あなたの悲しみを受け入れます。あなたの迷いを受け入れます」
カイトの手はほどけ、栞の両手に包まれていた。
「そして、あなたの決断を受け入れます」
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