第26章

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その時のカイトの恐怖や不安がそのまま表現されているようだ。 「いずれは、もっとひらけた居心地のよい家に改築しようと思っています」 カイトは栞の方を向いて手を取り、中へいざなった。 邸宅の一室に理恵子とともに通され、少し待っていると、白い服の若い男性が観光ガイドだといって理恵子一人を連れ出した。 残された栞は、大きな窓のある部屋でクッションにもたれて座っていると、ふいに懐かしい美しい声で呼びかけられた。 「栞」 振り返った栞は、そこに昨日別れたばかりのようなエステラ・リーがいた。 思わず駆け寄ったが、言葉にならず見つめるしかできなかった。 「なにか言いなさいよ」  エステラが促した。 「よかった。無事で」 声が震えた。 日本から出て、ずっと情報を追いかけてきた。 でも、見つけられなくて。 「そう。カイトもなかなかわたしを見つけ出せずにいた。楊の事件が明るみになってから、警察に事情聴取されて。それから、ずっと楊とマスコミから逃げてた」 政府高官とのつながりを取り持ったのは夫である以上家にも帰れず、ホテルを転々とした。 「マスコミへの情報はかなり制限されている。そうしないといろいろな人の安全が保たれなかったから」 そういうと、エステラは栞の頭を抱いた。     
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