第26章

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14年前のこと。 サラベナ王国の若き王位継承者カイト・ククリット殿下がイギリスへ一年間の留学へ出発した後のことだった。 スーィン・リーは14歳。 父親はサラベナ王国軍最高権力者となったばかりだった。 国王と将軍は幼なじみで、力を合わせて国政を盛り立てていくものと、国民全体が思っていた。 しかし、リー将軍には野心があり、後ろ盾にする人と資金があった。 将軍の野心は、サラベナ王国をわがものにすること。 元々中国系移民であったリー将軍だが、なにが彼の野心をかきたてたのか。 今となっては焚きつけられ踊らされていたのか、自身の強固な意思であったか、理由は娘にも伝わっていない。 ある日、突然父に呼び出された少女スーィンは中国の政府高官で後ろ盾でもある楊氏との養子縁組を聞かされた。 相手は会ったこともない、しかも父と年のあまり変わらない40歳前後の男性。 聡い彼女にはすぐにわかった。 父親の野心のための道具として、14歳の自分が差し出されるのだ。 スーィンは怒り狂った。 しかし同時に自分が断れば、父は自分の2歳下の妹に同じことをさせるのだろうと思った。 12歳の妹。 吐き気がした。 しかし、姉としてを妹を守らねば。     
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