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白と黒の縞々の地面に、身体をおかしな方向に曲げた自分が横たわっている。
それを通行人たちが恐々と遠巻きに見下ろし、中にはその様子をスマホのカメラに収めている者も。
「え? え、どういう事? あれは誰、なに、僕……!?」
「あれが実体。今のアンタは浮遊霊なのよ、橘 八雲。さっき車に轢かれて死んだの。見た目はキレイだけど内臓は破裂してぐっちゃぐちゃ。即死ね」
「ヤミー、もうちょっとソフトに。彼だって受験日の朝に車に撥ねられるなんてマンガみたいな不幸であっさりグッチャリ死んじゃって。認められずに霊体だけ独り歩きしてるくらいショックなのに」
「…………」
二人の会話が耳を通り過ぎて行く。
実は、なんだか足元がふわふわしてるなぁとは思っていた。
「あの……いくつか質問いいですか」
八雲が呆然と片手を挙げて幼女と男を見つめると、二人は揃ってコクンと頷いた。
「僕ホントに死んだんですか生き返れないんですか受験はどうなるんですかあなた方はなんなんですか彼女いない歴トシの数のままジエンドですかまぐまぐってなんですかーー!?」
「……とっ散らかってるわね」
「オイラ、彼女いない歴とまぐまぐの質問しか聞き取れなかったな」
「いいから答えてくださいーー!」
ヘナヘナとその場に座り込んだ身体はうっすらと透けていて、今ではこれが自分の記憶が作りだした霊体の幻影である事も理屈抜きでわかる。
すると幼女が男の腕からピョンと飛び降りて、八雲の目の前に仁王立ちになった。
「……死した者が蘇る事などあり得ない。アンタの生はさっき完全に途絶えたの。思い描いていた未来も希望も当然実現できはしない。死とはそういうもの」
「……!」
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