135人が本棚に入れています
本棚に追加
「ただいま涼香」
「……和史、おかえりなさい」
声がして見上げると、私の隣には、ずっとその帰りを待ち侘びていた愛しい人が立っていた。
ほんの一週間ほど顔を合わせていなかっただけだというのに、ひどく懐かしく感じる。少し伸びた前髪も、久しぶりに私に触れる節くれだった大きな手も、何もかもが愛おしかった。
「北山さん、来てくれたんだね」
「ええ、年末で忙しい中なんとか都合をつけて来てくださったの」
ふいに、和史の何かを確かめるような視線とぶつかった。
「……なに?」
「いや、今度こそ東京に連れて行くって言われたんじゃないかと思って」
「和史、知ってたの?」
かつて課長の気持ちが私にあったことを、和史には話していない。彼の勘の鋭さに驚いた。
最初のコメントを投稿しよう!