epilogue ~甘い未来~

15/18
前へ
/39ページ
次へ
「ただいま涼香」 「……和史、おかえりなさい」  声がして見上げると、私の隣には、ずっとその帰りを待ち侘びていた愛しい人が立っていた。  ほんの一週間ほど顔を合わせていなかっただけだというのに、ひどく懐かしく感じる。少し伸びた前髪も、久しぶりに私に触れる節くれだった大きな手も、何もかもが愛おしかった。 「北山さん、来てくれたんだね」 「ええ、年末で忙しい中なんとか都合をつけて来てくださったの」  ふいに、和史の何かを確かめるような視線とぶつかった。 「……なに?」 「いや、今度こそ東京に連れて行くって言われたんじゃないかと思って」 「和史、知ってたの?」  かつて課長の気持ちが私にあったことを、和史には話していない。彼の勘の鋭さに驚いた。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

135人が本棚に入れています
本棚に追加