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「でも同時に、私の役目は終わったって思ったんです。彼はもう十分描けるようになったって」
「……麻倉さん?」
私が行きついた答えを、自分で言葉にするのはつらい。でも、このことはきっと、私が三浦さんの側にいる限り、避けられないことなのだ。
「私が三浦さんの近くにいると、日菜子さんのことを思い出させてしまうかもしれない。私のせいで、彼がまた描けなくなる日が来るかもしれない。そう思うと……つらくて堪らないんです」
私がこんなふうでは、夏希さんにまた心配をかけてしまう。そう思って唇をきつく噛みしめた。
しかしこれ以上堪えることができず、一粒また一粒と涙が頬を伝い落ちる。
「麻倉さん、あなた……和史のことが好きなのね」
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