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「はい……」
私は頬を流れる涙を拭うこともせず、夏希さんの問いに頷いた。
なんてことだろう。自ら望んで彼の側を離れたのに、私はやっぱり彼のことを忘れられずにいる。それどころか、時間が経てば経つほど、彼への想いは更に深くなっていく。
「麻倉さんあなた、和史に自分の気持ちは伝えたの?」
「はい、返事はもう少し待っていて欲しいと言われました。でもその後で日菜子さんのことを知って……」
「身を引いちゃったのね」
夏希さんは、涙の止まらない私にそっとハンカチを差し出した。
「麻倉さん、あなたのその不安な気持ちも、全て和史にぶつけてみたら? 和史があなたのことをどう思っているのか、それは和史にしかわからないことなのよ。……そうだわ、ちょっと待っていて」
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